PROJECT

中和処理などへの微細気泡の活用

私たちIHIグループは、持続可能な社会の実現とIHIグループの成長に向けた取り組みとして環境に配慮した製品・技術・サービスの提供をしています。技術開発本部では、微細な気泡を活用することにより環境負荷低減への貢献を目指しています。

SCROLL

私たちIHIグループは、持続可能な社会の実現とIHIグループの成長に向けた取り組みとして環境に配慮した製品・技術・サービスの提供をしています。技術開発本部では、微細な気泡を活用することにより環境負荷低減への貢献を目指しています。

排出されるCO2を排水処理に活用

私たちIHIグループは持続可能な社会の実現と、IHIグループの成長に向けた取り組みとして環境に配慮した製品・技術・サービスの提供をしています。技術開発本部では、排出されるCO2を1㎜以下の微細な気泡に溶け込ませて有効活用する技術開発を行っています。

工事現場や工場では、コンクリートやセメントを扱うことで器具の洗浄などに強アルカリ排水が出てしまいます。この排水をそのまま流すと法令違反や水質事故につながるため、中和処理をする必要があります。
ここで、今回ご紹介する技術の登場です。

強アルカリ排水に、微細なCO2の気泡を注入することで中和させて害のない排水に変えることができます。今までの中和方法は大量の排水を処理するために設備・動力コストがかかることがありました。しかし、CO2微細気泡を用いた中和方法は処理時間を大きく削減し、ポンプのような動力を使わず消費電力が抑えられるメリットがあります。現在は、プラントなどで発生したCO2を集めて精製・充填したCO2ボンベを使用しています。将来的には工事現場や工場で重機や装置から発生する排ガスや空気中から回収したCO2を用いることができればカーボンニュートラルの世界を実現させることもできます。

環境負荷・ランニングコスト・消費電力の3つの「減」

微細気泡は、浮力が小さい・比表面積(表面積÷体積)が大きい・自己加圧効果が高い特徴があり、炭酸ガスを水の中で溶けやすくしてくれます。しかし、気泡を細かくすることにはコストがかかるため細かければ細かいほど良い、というわけではありません。私たちは用途に応じた適切な気泡の大きさをつくる工夫をすることで中和処理の時間と炭酸ガスの使用量を今までのポンプ通水に比べて格段に減らすことを可能にしています。これは、ランニングコストの「減」に加えて空気中に排出される余計な炭酸ガス量も少ないため環境負荷「減」も実現させます。また、機器としては炭酸ガスをボンベから高圧な状態で取り出せるのでポンプのような動力が不要となり消費電力「減」にもつながります。

小さな泡が持つ大きな可能性

微細気泡はとても多才で、物質を溶けやすくさせる特徴に加えて泡自身のもつ作用があります。外部から圧力がかかることで気泡を破壊しその衝撃で物質に対して働きかける衝撃作用や、水中の様々な粒子汚れに付着して浮上分離させる界面活性作用です。この特徴を活用して洗浄の分野でも技術の適用範囲(湿式洗浄など)を拡げる取り組みを行っています。例えば、ガラスや光学部品など水につけて洗剤で洗い流す部分を置き換えることで洗浄の品質向上や溶剤・水の使用量低減を可能にします。

技術開発本部の吉田は、微細気泡の研究に入社から10年以上携わる。今までの道のりを話します。
「泡の研究を始めた頃は、知見を持つ社員が少なかった。ひとりで黙々と研究開発を行い、泡の物性がやっとわかり始めたものの、IHIの製品としてどう具現化していけばいいかの解が見つからなかった。苦労の末、やっと装置として世に出せるようになり、共に研究を行う仲間が増えたことも嬉しい。研究開発を加速させて泡の可能性を拡げるとともに、環境負荷低減にも貢献していきたい。」

IHIグループは、“中和処理”・“洗浄”を代表として微細気泡の活用による環境負荷・ランニングコスト・消費電力の3つの「減」を実証しています。これからは微細気泡の更なる可能性を見出し、より一層社会に貢献できる技術開発に挑戦していきます。
(関連特許;特許第6063806号,特許第6218422号)

プロジェクト担当者
IHI技術開発本部 技術基盤センター 物理・化学グループ 吉田 有香
IHI技術開発本部 技術基盤センター エネルギー変換グループ 山下 達也