PROJECT

共創で未来をつくるスタート地点
「世の中の社会課題の現場を見に行く」
活動(後編)

共創で未来をつくるスタート地点「世の中の社会課題の現場を見に行く」活動(前編) IHIが協力企業や研究機関、他社と共に社会課題の解決に取り組む前段階として始めた「世の中の社会課題の現場を見に行く」プロジェクト。参加メンバ... View Article

SCROLL

共創で未来をつくるスタート地点「世の中の社会課題の現場を見に行く」活動(前編) IHIが協力企業や研究機関、他社と共に社会課題の解決に取り組む前段階として始めた「世の中の社会課題の現場を見に行く」プロジェクト。参加メンバ... View Article

共創で未来をつくるスタート地点「世の中の社会課題の現場を見に行く」活動(前編)

IHIが協力企業や研究機関、他社と共に社会課題の解決に取り組む前段階として始めた「世の中の社会課題の現場を見に行く」プロジェクト。参加メンバーに話を聞きました。

連携ラボグループの坂元理絵さんは「私たちのグループではi-Baseの活用をしながら、社内外の連携をベースに新しい事業の種や、それにつながる技術開発の種を見つけようと四苦八苦しています。それには、いろいろな物事が実際に起きている現場を見て、気付きの感度を高める必要があると考えました」と話します。

坂元 理絵|技術開発本部 技術企画部 連携ラボグループ

技術広報グループの髙嶋耕司さんは普段、「IHI技報」の編集に携わっています。「これまでは宇宙特集とか産業機械特集とか、分野ごとの製品に関する特集が多かったのですが、最近は社会課題を解決するためには何ができるかといった視点で特集を組むことが増えてきました。『社会課題』と当たり前のように使っている言葉でも、本当に分かっているのかと自問自答すると、現地で見るという今回の機会が貴重だなと思いました」

髙嶋 耕司|技術開発本部 技術企画部 技術広報グループ

「暮らしの中にある身近な社会課題を自分たちごととしてつかむ非常に有意義な機会だと考えて参加しました」と話すのは連携ラボグループの西村賢二さん。視察先では、若い移住者が活躍している姿が印象的だったといいます。「住んでいる人たちに共感してしまうのではなくて、別の見方ができるのがいいのかなと思いました。変化をもたらす異なる世代の人たちがいることで、住んでいる人たちも引っ張られていくのかなと」

西村 賢二|技術開発本部 技術企画部 連携ラボグループ

外から来た人の目で見るからこそ地元に身を置いていると気付かない魅力や価値に気付き、新たな可能性を示すことができる。上勝町の「葉っぱビジネス」もその好例です。坂元さんは「ミカン栽培で生計が立っている間はなかなか新しいことを取り入れようとはならなかったと思いますが、寒波でミカンが駄目になったのをチャンスと捉えたのもポイントだと感じました」と振り返ります。

前橋商店街の活性化は、都内から移住した市の職員が課外活動的に始めた小さな動きが出発点でした。町の至る所に足を運び、顔が見える関係性を築きながら空き物件の利活用を促進し、地元ゆかりの起業家、経営者もまちづくりに加わって大きな事業も生まれていきます。「前橋市は住んでいる人たちも一緒になって参加している印象でした」と坂元さん。髙嶋さんも「著名人のネットワークや資金も含め、みんなを巻き込んでいる感じがしましたね」とうなずきます。

視察先の成功例に共通するポイントは他にも。連携ラボグループの落合源三さんは資源循環に関心を持って調査を行っており、今回のプロジェクトのテーマ「動脈産業が静脈産業に足を運ぶことでサーキュラーエコノミーを考える」と合致することから参加。「資源循環に仕組みを変えていく時には、これまでのやり方を壊していかないといけない。非常に抵抗感もあるでしょうし、実際どう考えているのか本音を聞きたいと思いました」

落合 源三|技術開発本部 技術企画部 連携ラボグループ

本音も聞いて分かったのは「成功体験を重ねていくこと」の大事さ。「ごみの分別も空き店舗の活用も、最初は地元の人から拒否反応もありながら、それでもやり続けて成果が出始めると反応が変わってきて、だんだんと広がっていく。そうやって諦めずに突破していくのが、うまくいっている所の共通点だと感じました」

「上勝町はミカンが駄目になったこと、前橋市はシャッター街になったこと。どちらも強烈な危機感が起点になっているのも共通点だと思います」とも。西村さんも共感し、「危機感のレベルが違いますよね。われわれはよく『お困り事』と言いますが、そんな程度ではない本当の危機感をいかに捉えられるか。どんなことにも『本当にやばい』状況はあるはずで、その捉え方が甘いのかもしれないですね」と意識を高めます。

坂元さんがもう一つ気付いたのは、いずれの事例も「いろんなことをやりながらうまくいっている」点。前橋では「めぶく。」をキーワードにビジョンが共有され、それに向かって個々が動いて大きなうねりが生まれています。上板町の藍染め工房では「藍産業をもう一度つくる」という大きな目的の下、土づくりのために周りの農家さんを巻き込むとか、発酵と発色の研究など多岐にわたる取り組みを行っていました。ナカダイでは「廃棄物」を処理する仕事ではなく、寄せられた「資源」を目利きする仕事だという考え方をベースに事業を展開していました。

「一見つながっていないようで大きな目的の下でちゃんとつながっているのがすごい。私たちは活動一つにもどんな意味を持たせようかと考えてしまいますが、大きな目標にさえつながっていれば一つ一つの意味にこだわらなくてもいいんじゃないかなと、行く先々で感じました」(坂元さん)

そうした気付きをたくさん持ち帰った「世の中の社会課題の現場を見に行く」プロジェクトには、もう一つの目的がありました。それは「私たちにとっての『共創』をつくる」こと。i-Baseを拠点にIHIが異業種の複数企業と構築している「共創ネットワーク」のメンバーも今回の取り組みに参加しています。

プロジェクトをコーディネートする株式会社hdLの塚島健さんは「いろいろな企業さんの視点で物事を捉えると、それぞれ捉え方が違うので多様な社会課題の抽出の仕方があり、i-Baseとしては有意義だと思います」とした上で、「共創ネットワークのワークショップ風景を見た時に、皆さんそれぞれ共創の捉え方が異なっていると感じました」と指摘。

渡邉 倫子|技術開発本部 技術企画部 連携ラボグループ (写真左)
塚島 健|株式会社hdL (写真右)

「何となくの概念で進めていくといい結果にならない」と、プロジェクトにおける「共創」を再定義。「共創パートナーと新しいインプットを一緒にすることで、技術や経験、価値を共有し、『必然的な発明』『偶発的な発明』を生み出すこと」と、参加メンバーに伝えました。

「定義ができると目的がはっきりして、それに向かってどう問題解決をしようかと皆さんが一つの仮説や問いに向かっていけるようになります」と塚島さん。坂元さんが視察先で見た成功事例の「一つのビジョンを共有した上で、いろんなことをやりながらうまくいっている」姿とも重なります。

「共創パートナーと新しいインプットを一緒にする」という第1段階を終え、西村さんは異業種ならではの視点、特に「それは違うんじゃないかな、と思う見方があることが重要だと感じた」といいます。「社内の人間だとつい共感方向に寄ってしまいますが、ちょっと違うでしょうということが逆に学びになって、それも共創における重要なプロセスなのかなと思います」

髙嶋さんは「視察自体とは別で、移動中のバスや食事中に雑談から始まって各社さんの仕事の話も聞けて、共創パートナーについて理解を深められたのも収穫」とも。「この調査で何か結論を導き出すのは難しいよねと話していて、同じことを考えているんだなと、ちょっと安心しました」と笑顔を見せます。

今後は、インプットで気付いたことを互いに持ち寄って仮説を立て、i-Baseや各企業でできるプロトタイプを作成。それを自分たちが実践して得たユーザー体験を基に社会課題を抽出し、事業の種を育てていく予定です。

「多様な参加メンバーが一人一人、種類もスケールも異なるさまざまな気付きを出し合っていくプロセスが大事です」と塚島さん。「その小さな気付きのプロセスをいろいろなものに当てはめて、スケールアップすることで新しい事業につながれば」と期待を寄せます。

今後もIHIでは、共創パートナーの皆さまと共に社会課題に向き合い、取り組んでいきます。その拠点となるi-Baseで、「共創の先の未来」に向けてご一緒いただける企業さまのご来訪をお待ちしています。


取材協力:
株式会社モノファクトリー
前橋市にぎわい商業課
塚島 健|株式会社hdL
坂元 理絵|技術開発本部 技術企画部 連携ラボグループ
落合 源三|技術開発本部 技術企画部 連携ラボグループ
西村 賢二|技術開発本部 技術企画部 連携ラボグループ
渡邉 倫子|技術開発本部 技術企画部 連携ラボグループ
髙嶋 耕司|技術開発本部 技術企画部 技術広報グループ

i-Baseでの共創活動についてのお問い合わせは、下記のフォームからお寄せください。
技術情報 お問い合わせフォーム